砥石には天然と人造の2種類があります。
天然石と日本の鋼
天然石を使った砥石は、産地によって価値が変わるとも言われています。
荒砥だったら”但馬石”がいいとか、中砥だったら京都の”門前砥”がいいであるとか、仕上げ砥ならば京都の“カラス”に勝るものはないであるとか、様々な評価があります。
一様に言えることは、炭素系の鋼であれば、天然石との相性は抜群で、砥ぎ上がりも抜群の感覚を得ることが可能です。
天然石は切削力がありながらも柔らかく、刃物を削りすぎることはないので、日本古来の鋼には抜群の作業性と仕上がり感をもたらしてくれます。
天然石と相性が良いのは、この日本古来の鋼と、普通のステンレスを使った包丁です。
この日本古来の鋼を、天然石で砥いで仕上たときの見栄えと切れ味は、本当に素晴らしいものがあります。
刃物に“美”を感じてしまう瞬間ですね。本当に美しい仕上がりです。
これらの砥石は、かなり高価です。包丁よりも高いものはざらにあります。さすがに高価なだけあり、包丁を傷めることなく、最高の仕上がり感と切れ味を提供してくれることに間違いはありません。
しかしこれ以上硬い材質の包丁には、ちょっと天然石では刃が立ちません。
人造石と硬い金属
イ・硬い金属も簡単に砥げる砥石
ニッケルダマスカス鋼やバナジューム鋼でできている包丁には、いったいどんな砥石を使えばいいんだ、ということになりますね。
このような現代の刃物に適した砥石は、それを作っているメーカーからきちんとリリースされています。
例えば、籐〇郎から出ているセラミック素材の砥石は、同メーカーから出ている刃物(ニッケルダマスカスやバナジューム鋼)の素材に対して、全て対応で来るように作られています。
切削力が強く、しかも削りすぎることもない、安定した仕上がりになります。
籐〇郎の製品以外にも、セラミック素材の砥石は多数ありますから、好きなものを選べば良いと思います。
人造石で日本の鋼は砥げるか
これらの砥石で、日本古来の鋼を砥ぐことも可能ですし、慣れれば天然石の砥石よりも短時間で所定の切れ味を持たせることも可能です。
しかし、残念ながら美しさを表現することは難しいでしょう。
硬い金属に対して効果的に作られているので、硬い金属を美しく仕上げることは可能ですが、ちょっと柔らかい古典的な鋼には美しさを表現できないですね。
でも、硬質な金属は美しく仕上げることができます。
ニッケルダマスカスやバナジューム鋼の包丁を、もっと美しく仕上げたければ天然石の仕上げ砥で軽くなでるように砥ぐと、本当に美しく仕上がりますよ。
特に“霞流し”の包丁などは、芸術品的に美しく仕上がります。
私も霞流しの包丁には、刃を付け終わったあとで、天然石の仕上げ砥で美を与えています。