最初期に打ち出されたシリーズ延命による袋小路回避のための方策(仮面ライダー変身ベルト)

   2013/05/24

この記事の所要時間: 848

これが人気シリーズ化を決定づけた。最初期に打ち出されたシリーズ延命による袋小路回避のための方策。

第一作「仮面ライダークウガ」では、リメイクにありがちな言葉が掲げられています。
それは「原点回帰」。
シリーズの長期化は末期には最初のイメージとは全く違った形になってしまうというのはよくあることです。それは概ね最初からついてきているファンにとっては好ましいものではない事が多く、そのため原点回帰という言葉はマニアには非常に受けが良いのです。
おそらく、久しぶりの仮面ライダーですので、人気を得るためにはマニアの力が必要という判断もあったのでしょう。ヒーローである仮面ライダークウガのデザインは1号を意識した赤い丸い目と全体的にシンプルなデザインとなっています。

番組内容は、特撮ファンにウケが良い「リアル」路線となっていました。仮面ライダーと刑事がコンビを組むバディものにすることで「現代日本に怪人が現れたら警察はどうするのか」というシミュレーション要素の強い、緊迫感のあるストーリー展開は特撮ファンを唸らせるとともに、アニメやゲームのファンといった今まで特撮に興味がなかった層を引き入れることに成功しました。
もちろん、ビデオではない毎週新しく活躍が見られる仮面ライダーの登場は子供たちにも大きな衝撃を与えます。こうして、予算の使いすぎによるプロデューサー交代など紆余曲折ありつつも作品は高い評価を受け、次回作の製作が決定しました。

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第二作『仮面ライダーアギト』は概ね前作と同様の路線ながら、よりエンターテイメント色を強めたものとなりました。当初は続編として企画が進行したこともあり、ヒーローである仮面ライダーアギトのデザインもクウガのラインを踏襲しています。
番組は前作以上のヒットを飛ばし、こんにちに続く夏の映画化の礎を築き、ゴールデンタイムの1時間スペシャルの放送などシリーズ継続に大きな弾みを付けました。

しかし、作品人気とは裏腹に思ったより玩具の売り上げが伸びないという結果となりました。これではスポンサーである玩具メーカーが困ります。分析の結果、前作とのキャラクター相似が、売り上げが伸びなかった原因であると判断されました。二作目からマンネリの弊害に直面というのもシビアな話ですが、このことがシリーズの運命を決めたといってもいいでしょう。

第三作目『』は、いままでの仮面ライダーのイメージを覆す要素を大量に投下しました。まず、ヒーローである仮面ライダー龍騎とその相棒仮面ライダーナイトは、西洋甲冑をモチーフとし仮面ライダーならまずイメージされる大きな目を露出しないという、衝撃的なデザインとなりました。作品内容はモンスターと契約することで誕生する仮面ライダーが13人存在し、それらが善悪に別れて戦いあうというものとなりました。これが、平成ライダーの特徴である「悪の仮面ライダー」であるダークライダー誕生の瞬間です。

以前も仮面ライダーBLACKのライバルであるシャドームーンのように仮面ライダーそのもの外観をした悪役は存在しましたが、彼は仮面ライダーを名乗ることは無くあくまで幹部怪人扱いとされていました。しかし、この龍騎をもって仮面ライダーの敵として仮面ライダーが登場するという、まるでガンダムのような状況が現れたのです。
(余談ですが、現在ではシャドームーンも幹部怪人ではなくダークライダー枠で扱われるようです)
 こうした、平成ライダーから入ったアニメファンには馴染みでも古くからの仮面ライダーファンには抵抗しか感じないコンセプトで始まった『仮面ライダー龍騎』ですが、これが子供たちに大人気となり、前作を超える売り上げを記録。ここにいたり、平成ライダーのシリーズ化が確定したのです。

 こうした経緯から常に子供を意識したキャラクター作りをするようになり、毎年新しい仮面ライダーが公開されるたびに大人のファンからは「なんだこれは」と言われるのが季節の風物詩となります。
 しかし、これはデザインの行き詰まりを避けるために意図的に行なわれていることなのです。

 デザインのインフレにより行き詰まりはシリーズ化の宿命です。こうしたものは新しいキャラクターを生み出しつづけることで、どんどん角などのパーツが増えていき新鮮味を失ってしまうのです。たとえばガンダムでは後続のものほど角が増え肩が大きくなり、背中に背負うもので個性を出そうとしますし、ウルトラマンは全て初代ウルトラマンかウルトラセブンをベースにデザインされています。

 しかし、平成ライダーでは三作目の時点で「前作と似ていない」ことをコンセプトとした作品作りを求められたことから、以後のモノ全てで「仮面ライダーかくあるべし」といいう固定観念を無視したキャラクターを送り出し続けることができるようになりました。
 デザイン面では四作目・仮面ライダーファイズのように2つの大きな目にこだわらず、円形の単眼にラインを引くことで「顔」を作ったり、八作目・仮面ライダー電王ではモチーフとなったお伽話にあわせた仮面デザインをとなったりなど、多種多様でどれとも似ていないキャラクターが大量に生み出されました。

 設定面でも改造人間にこだわらず、「悪の組織に改造された怪人が仮面ライダーを名乗り正義の為に戦う」という初期作品のコンセプトを「敵怪人と同じ力を使い変身するヒーロー」として捉え直すことで、自由なモチーフ設定を可能としたのです。
 また、マニアによる「仮面ライダーはダークヒーロー、孤独のヒーローであるべし」という要求も平成ライダーはほとんど無視してきました。そもそも最初の『仮面ライダー』の時点で協力者である“おやっさん”や少年仮面ライダー隊がいるなどと実はアットホームな雰囲気すらあり、実は仮面ライダーはいうほど一人ぼっちではありません。そういうイメージを踏襲したのか、平成ライダーは主人公の周りに多くの仲間が集まることが殆どです。作品のトーンが暗すぎても困るというわけです。

 これらはマニアからは常に批判の対象となってきましたが、それでも平成ライダーシリーズは番組の本来のターゲットである子供を飽きさせないためにこの方向で突き進んでいきます。

元来、子供向け要素とマニア向け要素は相容れないものです。完成度の高い子供向け作品は全ての人の鑑賞に耐えますが、完成度の高いマニア向け作品はマニア以外の視聴に耐えるものではありません。そのため、どっちつかずは許されません。既にシリーズの立ち上げに成功した以上、マニアのバックアップは不要となったという側面はありますが、文句を言っても見るマニアのいうことをきくよりも、実際におもちゃを買ってもらう子供たちの方が大切だというわけです。

このように最初期に打ち出された方策が、シリーズ延命による袋小路回避のために働いたのが平成ライダーシリーズ継続の大きなチカラとなったのです。

 もうひとつ、シリーズ物で現れるのが、創作活動を生業にするものの本能とでもいうべき、「新しいことをしたい」という欲求です。毎年同じ事をしていればそう思うのも当然なのですが、基本的にそういう新しいことは顧客の望むものではないことがほとんどです。いわゆる「誰得」に終わってしまうのです。

 四作目『仮面ライダーファイズ』では変身ベルトの争奪戦がストーリーの軸となり、同じ仮面ライダーでも登場する人物がなんども変化するなど、さまざまな試みがなされました。以後も新機軸を模索し主人公のキャラクター像もスタンダードなヒーロー像を踏襲しないものを打ち出して行きました。その結果、キャラクター性はピーキーなものとなり複雑化の一方をたどります。それ自体は平成ライダーシリーズの持ち味として残りますが、一時期は感情移入が困難な性格のキャラクターばかりになってしまうこともありました。

 またストーリーの仕掛けに新しい要素を盛り込もうとした結果、メインの視聴者層やその両親でも理解が難しいものとなってしまい番組のサイト上でプロデューサーによる解説が掲載されたということもありました。
 このように、新しい試みがあらぬ方向へ行ってしまうというのは往々としてあることですが、作品のターゲットが子供である以上、それは適切とはいえません。

 「新しい試み」はマニアには受けるかもしれませんが、それは同じようなものばかりずっと見てきた人たちだから受けるだけであり、一般の人はそんな濃いものを見せられても困るのです。また、子供はテレビを見てわからないことは親に質問しますが、子供にいちいちテレビのことで質問を受けるのは鬱陶しいだけで何にもなりません。それに、あまり凝った内容では大人も理解できずに訊かれたことも答えられないでしょう。この時点で既に平成ライダーの詰め込み具合は二時間ドラマを越えているわけですから…。

 『ファイズ』は携帯電話をモチーフとしたメカニカルなベルトのギミックがウケて長らく変身ベルト売り上げ第一位の座に君臨し続けます。しかし以後作品内容はこのような傾向が続き、ライダーの人気はそれなりに維持するもの、玩具の売り上げにつながるような作品内容ではありませんでした。

この状況に大きな変化をもたらしたのは第八作『仮面ライダー電王』です。
電車で登場する仮面ライダーなど、特異ながらも親しみやすいキャラクターが大人気を博し、プロデューサーによる説明が必要なほど複雑なストーリーだったにも関わらず平成ライダー中興の祖といって良いほど売り上げが上昇しました。
しかし、この電王人気の勢いを駆ってさらなるヒットを狙った次作『キバ』は、七作目以前の要素がより濃く出たものとなったため売り上げを落としてしまい、前作の人気を生かすことができませんでした。

そのため、しばらくは映画作品などで『電王』のシリーズを継続させつつ、平成ライダーシリーズは思い切った手を打つことになりました。

変身ベルト売上75万本超に至る道 大ヒットを生んだ戦略
1 これが人気シリーズ化を決定づけた。最初期に打ち出されたシリーズ延命による袋小路回避のための方策。
2 10年間の集大成と転換点となった2009年 放送開始月の変更に伴う販売戦略、及びシリーズカラーの変更。
3 知名度を武器に、シリーズの地位向上を図る。
4 派手な広告、話題を呼ぶためのゲスト選定に隠された巧妙な手口。

終わりに:社会情勢への対応。現実とかけ離れたエンターテイメントの効用。

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