プレミアムセダンを徹底比較(マークX・ティアナ・レガシィB4・アテンザセダン)
マークXとそのライバルがいるプレミアムセダンクラスは、このところ人気は低調なのですが、マイナーチェンジされ生まれ変わったマークXにより、もう一度4ドアセダンを見直すきっかけになるかもしれません。
プレミアムセダンのユーザーは比較的年齢層が高いこともあり、走高性能よりも乗り心地や快適な装備が好まれますが、そして安全性、運転支援システムに最も興味を抱く世代でもあるのです。
目次
居住性を比較
さすがにこのクラスになると、居住性は申し分なく、どの車種であっても満足のいくレベルになっています。
室内の広さと言う点では、「ティアナ」「アテンザ」というFF車が優れており、レガシィB4も北米向け中心のサイズのために余裕が感じられます。
サイズ
車体 | 室内 | ホイールベース | |
---|---|---|---|
マークX |
4,770 1,795 1,435 |
1,975 1,500 1,170 |
2,850 |
ティアナ |
4,880 1,830 1,470 |
2,130 1,515 1,215 |
2,775 |
レガシィB4 |
4,795 1,840 1,500 |
2,030 1,545 1,220 |
2,750 |
アテンザセダン |
4,865 1,840 1,450 |
1,980 1,550 1,170 |
2,830 |
マークXの居住性
他を見なければ何の不満もない室内
スペースを取るV型6気筒エンジンと、FR駆動という足かせのあるマークXの室内は、現在の2.5Lクラスセダンにおいては決して広いとは言えません。
ライバルに広さで劣るマークXですが、日本のユーザーに向けた高級セダン造りのうまさが発揮されており、マイナーチェンジでスポーティーさも加わっています。
インテリア
ほどよい包まれ感のある運転席は、8ウェイパワーシート、助手席は4ウェイパワーシートを備え、体型に合ったドライビングポジションが選べ、シートを自動的に乗り降りしやすい位置へ移動させ、スムーズな乗り降りをサポートする「運転席パワーイージーアクセスシステム」も装備されます。
さらに運転席4ウェイ電動ランバーサポートやフロントシートフルフラット機構と至れり尽くせり。
その変わり、後席は実質2人掛けと割らなければいけないのがFR車の定めです。
しかし、主たるユーザー層の年齢が高いことを考えれば、リクライニング機構もあり、これで十分という事も出来ます。
マークXに乗ると最近の車にありがちな、やたら広く開放的な室内と異なり、妙に落ち着くのも「ならでは」のトヨタマジックなのかも知れません。
ラゲッジスペース
トランク容量は十分なゆとりの479Lを確保し、広い開口部をレイアウトしているのでスーツケースやゴルフバッグなどの大きな手荷物も想定しているのは いかにもマークXらしいところです。
分割してシートバックの前倒しも行え、載せる物の状況に合わせて自由にアレンジできるなんていう細かい芸当も出来るのは意外と思われるかもしれません。
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ティアナの居住性
快適なシートを求めるならティアナだ
ティアナを始め、後で登場するレガシィ、アテンザセダンはともに北米や中国市場に向けて開発されているだけあって、日本人なら5人が乗っても問題ないスペースを確保しています。
特に北米市場では最も数多く出るクラスでもあるので、けっして高級セダンではなく、実用車であることも事実なのです。
ここが国内向けに開発されたマークXとの最も大きな違いになり、今一つも二つも国内で人気の出ない要因でもあるのです。
インテリア
比較車種中最大の室内寸法を持つティアナの目指したのは「おもてなし」。
これがこのクルの性格の全てを表していると言ってもいいでしょう。
脊椎への負担を減らす「前席スパイナルサポート機能付シート」は、つつみこまれるような柔らかさの「振動吸収3層構造」のクッション を採用。
さらに本革シートの前席は背面と座面からの送風が可能な「エアコンディショニングシート 」になっています。
加えて、インテリジェントキー連動運転席オートドライビングポジションシートに、助手席パワーオットマン と、前席だけでも多彩な機能が盛りだくさん。
もちろん、男性3人が並んでも肩がぶつからずゆったりと座れ、ひざ周りと足元スペースにも余裕を持たせたリアシートも忘れてはいけない特徴です。
ラッゲジスペース
マークX以上の広さの506Lの大容量トランクルームは、 9インチのゴルフバッグを4個も収納でき、開口部を広く、高め6:4分割式のリアシートや助手席を倒して大きな荷物や長尺物も積載可能になるのです。
レガシィB4の居住性
広いだけじゃない、いつでもどこでも快適な室内
レガシィB4は他のFF車と異なり4WDであるため居住性において差が付くと思われますが、気になるフロアトンネルの盛り上がりはわずかで、その余裕の車幅を活かして広い空間を作り出しています。
そして4WDセダンらしい装備もあり、他とちょっと違うスバルらしいセダンとなっています。
室内スペース
シートは形状から体圧分布に至るまで最適化し、ロングドライブでも疲れにくい理想的な座り心地で、前席の肩・肘周りにもゆとりを持たせ、後席足元も十分なスペースを確保されています。
また、フロントだけでなく、リヤにもシートヒーターを標準装備して、早朝や寒い季節でも素早くシートを温められるのは4WDのレガシィB4ならでは。
ラッゲジスペース
トランクルームはティアナをさらに上回る525Lもあり、ここまで来ると、もはやワゴン並みの大容量です。
さらに18Lのサブトランクまで装備しているので汚れものも収納できます。
アテンザセダンの居住性
豪華でいてセンスもいい広々空間
最近のマツダ車はエクステリアもさることながら、インテリアのデザインと質感の向上には著しいものがあります。
お馴染みになったピュアホワイトのシート地などはライバルが手を出せない領域で、ダッシュボードやドアトリムにまで展開しています。
また、シートのサイズもタップリあり、レガシィB4同様に広い車幅と、さらに後席にはFF車ならではの余裕ある足元空間が広がります。
装備面も充実しており、電動リアウインドーサンシェードやBoseRサウンドシステム、遮音性の高いフロントガラスなど、高級セダンにふさわしい装備や、グリップの3時・9時位置にヒーターを内蔵 したステアリングヒーターなど、マツダのフラッグシップセダンに相応しい内容になっています。
ラッゲジスペース
トランクルームは474Lの容量で、レガシィB4には劣りますが、ワイドな開口部を持ち、かさばる荷物も楽に出し入れ。
トランクのヒンジはトリム内に格納されるため、トランクリッドを閉めたときに荷物を傷つけることを防ぐことが出来きる小技も効いてます。
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燃費を比較
マークXを始め、このクラスではこれまで動力性能最優先で、燃費を重視しなかったのですが、さすがにそうも言ってられな状況になってきました。
すでにハイブリッドやダウンサイジングターボも導入されつつあり、高級セダンとはいっても燃費性能をなおざりには出来ません。
燃費比較表
JC08モード燃費 | |
---|---|
マークX2.5 | 10.6~11.8 |
マークX3.5 | 10.0 |
ティアナ | 14.4 |
レガシィB4 | 14.8 |
アテンザセダン2.5 | 16.0 |
マークXの燃費
燃費の話題は飛ばしたい
マークXは2.5L、3.5LともにV型6気筒エンジンを搭載。
そのドライバビリティとは裏腹に燃費の良いエンジンとは言えません。
3.5Lの10.0㎞/Lはともかく、2.5Lでも11.8㎞/Lというのは、同じV型6気筒2.5Lで、車両重量が200㎏以上重いクラウンや日産のフーガ並み。
V型6気筒の良さはたくさんありますが、こと燃費に関しては良いところは何もないというのが現状です。
約265万円からという低価格設定というのが唯一の取柄。
ティアナの燃費
プレミアムでありながらリーズナブル
ティアナの14.4㎞/Lという燃費は直列4気筒2.5Lエンジン搭載車の平均値ですが、レガシィやアテンザには劣り、特に4WDのレガシィB4の方が勝るのはくるしいところです。
しかし、燃費でライバルに差を付けられてはいても、ティアナは256万円台からという低価格が武器になります。
レガシィやアテンザがそれぞれのブランドのフラッグシップセダンということで、豪華装備のグレードしかない中、マークXと同様に、上にまだ上級車種がラインナップされてることもあり、安価なグレードも選べるのが特徴です。
1~2㎞/Lの差は車両価格で簡単に取り戻せるので、ティアナの場合はグレード次第でライバルより経済的になる可能性を秘めています。
レガシィB4の燃費
もう少し選択肢があったなら・・
4WDであっても、マークXやティアナより燃費が良いのはさすがスバル。
動力性能も文句ないのに燃費性能まで優れていると言う優良セダンであるのは間違いありません。
しかし、グレードがたったの2つしかなく、全て標準装備というのはありがたい反面、少しでも経済的にという選択肢がないのは残念。
これも大型化して国内販売を重視出来ない状況になった弊害なのです。
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アテンザセダンの燃費
燃費ナンバーワン、価格もナンバーワン
燃費で圧倒的にライバルを引き離しているのがアテンザセダン。
燃費といえばクリーンディーゼル車なのですが、実は2.5L車も低燃費なのです。
エンジン出力もマークXに次いであり、トルクではマークXを上回っているのにかかわらず、この燃費はさすがSKYACTIVといったところでしょう。
しかし、価格を見るとその低燃費性能も吹き飛んでしまいます。
マツダのフラッグシップセダン、特にガソリン車では最上級車種になるために、他のグレードを選べないフル装備のモノグレードしかないのです。
約50万円安い2.0L車もあるとはいうものの、クリーンディーゼル車の中間グレード並みの価格というのは選ぶ価値すら疑問を感じてしまいます。
アテンザセダンの評価と買取・値引き・燃費情報 | 車価格.net
走りを比較
ガソリンエンジンでは最もパワフルな動力性能を誇るV型6気筒エンジンを搭載するマークXと、直列4気筒エンジンのティアナ、アテンザセダン、そして水平対向4気筒エンジンのレガシィB4と、同じ2.5Lでも多様なパワーユニットがあり、その性格も様々。
また、動力性能以外にもそれぞれの車種の個性が現れています。
動力性能比較表
最高出力 kw(ps/rpm) |
最大トルク (N・m[kgf・m]/rpm) |
JC08モード燃費 | |
---|---|---|---|
マークX2.5 | 149(203)/6,400 | 243(24.8)/4,800 | 10.6~11.8 |
ティアナ | 127(173)/6,000 | 234(23.9)/4,000 | 14.4 |
レガシィB4 | 129(175)/5,800 | 235(24.0)/4,000 | 14.8 |
アテンザセダン2.5 | 138(188)/5,700 | 250(25.5)/3,250 | 16.0 |
マークX3.5 | 234(318)/6,400 | 380(38.7)/4,800 | 10.0 |
アテンザセダンXD | 129(175)/4,500 | 420(42.8)/2,000 | 18.2~22.4 |
マークXの走り
FRとV6の伝統的な走り
このクラスでは数少ないV型6気筒エンジンを搭載するマークXですが、あまり走りのイメージはありません。
どちらかというとそのパワフルさは抑えつつ、プレミアムセダンとしての静寂性に重きをおいた性格だと捉えられています。
しかし、マイナーチェンジにおいて表情が一変したデザインや、エアロパーツをまとった新グレード「RDS」によってイメージはガラリと変わりました。
「トヨタのFRスポーツセダン」と標榜するだけあって、パワフルなV6エンジン以外でも、フロント54:リヤ46の理想的な重量バランスを生み出すことにより、FR特有の俊敏なハンドリングや卓越したコーナリング性能をさらにレベルアップしているのです。
ティアナの走り
豪華客船?
ティアナに走りを求めるユーザーは皆無ではないでしょうか。
世界で初めて1コネクトブッシュ を採用したリヤマルチリンクサスペンションとか、アクティブトレースコントロールなどの最新技術も、全てプレミアムセダンに相応しい豪華客船のクルージングのような優雅で気品のある走りのため。
つまり、攻めるだけ、パワフルなだけが走りに良さではないとしたら、ティアナの走行性能は優秀といえるのではないでしょうか。
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レガシィB4の走り
プレミアムでも他とは違うスバル流
レガシィB4の走りの魅力は水平対向エンジンだけでなく、そのAWDにあるのです。
高級セダンであっても全車AWD(4WD)というスバルのこだわりは、悪路走破性ではなく、安定したドライビングを4輪で行うということで、上質な乗り心地と安全性をも備えることになっています。
その結果、天候や場所さえも選ばないプレミアムセダンという独自の地位を獲得しています。
国内では車幅があって少々取り回しには苦労しそうですが、それはライバルも同じこと。
FFだ、FRだという前に4WDを試す価値は大いにあります。
アテンザセダンの走り
G-ベクタリングを装備する異次元のハンドリング
アテンザの走行性能に関してはSKYACTIVをフル採用した現行モデルからに大幅に向上していますが、相次ぐ改良を重ねさらに進化しています。
特に2016年8月に導入された制御技術の「G-ベクタリング コントロール」は、ドライバーのハンドル操作に応じてエンジンの駆動トルクを緻密に変化させることで、横方向と前後方向の加速度を統合的にコントロールする技術で、運転がうまくなったと錯覚するほどの効果があります。
勿論、最大の売りであるクリーンディーゼル車はマークXの3.5L車を上回るビッグトルクを持ち、最新の4WDシステム「i-ACTIV AWD」は、車が挙動を乱す前に制御するというもの。
まさに走りにおいてもマツダノフラッグシップセダンに相応しい性能を持っています。
安全装備を比較
マークXを始め比較車種全てに先進安全装備が備わります。
今では軽自動車でさえ自動ブレーキは当たり前になっています。
プレミアムセダンと名乗るからには安全性能もプレミアムでなければユーザーは納得しません。
技術革新が日進月歩で進む以上、新しい車ほど優れた装備が備わることになりますが、これらの装備は比較的容易に追加装着できるので、発売年度の古いマークXにも最新の装備がパッケージングされて備わり、他の車種も改良に合わせて随時採用されています。
マークXの安全装備
「Toyota Safety Sense P」標準装備
マイナーチェンジによって、歩行者検知機能付衝突回避支援型プリクラッシュセーフティ、レーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビーム、ブレーキ制御機能付レーダークルーズコントロールで構成された衝突回避支援パッケージの「Toyota Safety Sense P」を全車に標準装備 し、最新モデルと肩を並べる安全性能を手に入れています。
ティアナの安全装備
最低限の装備のみ
「エマージェンシーブレーキ 」「踏み間違い衝突防止アシスト 」「低速衝突軽減ブレーキ機能(前進時/後退時) 」などを一通り備えていますが、ライバルに比べて物足りなさは残ります。
フロントカメラだけのシステムであり、軽自動車程度かそれ以下の能力しかありません。
安全性能という意味では評価が低くなるのは言うまでもありません。
レガシィB4の安全装備
「アイサイトVer3」標準装備
スバルが先駆けとなって開発した先進安全装備は「アイサイトVer3」に進化。
ステレオカメラで常に前方を監視し、必要に応じて車両を制御することで安全運転をアシストし、クルマだけでなく、白線やガードレール、歩行者や自転車まで認識して自車の走行状況をもとに、ソフトウェアが必要な制御を判断します。
“はみ出さない技術” などは自動運転にも近いものがあり、勿論全車に標準装備されます。
アテンザセダンの安全装備
「i-ACTIVSENSE」一部車種に標準装備
「i-ACTIVSENSE」は、フォワード・センシング・カメラを採用し、歩行者も検知、作動速度域も拡大した「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポートを採用するとともに、走行中の道路標識を読み取ってディスプレイへ表示するほか、制限速度の超過をディスプレイ内のグラフィック点灯やブザー警告によってドライバーに通知する「交通標識認識システムなども採用しています。
スバルの「アイサイト」やトヨタの「Toyota Safety Sense P」に勝るとも劣らない性能なのですが、グレードによって装備内容が異なり、フル採用されているのは2.5L車とディーゼル車の最上位機種だけですので、購入時には注意が必要となります。
プレミアムセダンのまとめ
中々あっと言わせる新機種が出てこないプレミアムセダンですが、まだまだ多くのモデルがあり、それぞれにまったく異なる個性があるのが興味深いクラスです。
いずれはハイブリッドやダウンサイズの波が訪れ、老舗のマークXといえども存続は保証されていません。
また、輸出仕様がそのまま持ち込まれるケースは今後も続くと思われるので、日本人に向き合ったプレミアムセダンというのは消滅するかもしれません。
それまでは、このマークXが販売し続けるはずです。
そして、世界中で支持されるグローバルセダンとして、新しいプレミアムセダンが登場するのであれば大歓迎です。