コンパクトハッチバックを徹底比較(スイフト・マーチ・パッソ・ヴィッツ)
コンパクトカーにユーザーの求める全ての要求を盛り込むことは出来ません。
低価格が重要な要素になることからも、何を捨てて何を盛り込むのかが各車の特徴になってきます。
低価格の次に求められるのは低燃費ですが、ハイブリッドで低燃費を求めては低価格という重要な要素が損なわれます。
そこで解決策としてより軽量な車体を求めることになります。
新型となった「スイフト」は新開発されたプラットフォームに、独自のマイルドハイブリッドを採用してこれらをクリアすることを選択しました。
さらに安全性能という要望に対しても最新のパッケージを設定することで、コンパクトカーを求めるユーザーに対して答えています。
ではライバル各車と比較するとどういった判断が下されるでしょうか。
この記事を最後まで見て頂くとその答えが出るはずです。
目次
居住性を比較
「スイフト」の居住性はこのクラスでは優れているのですが、最新のライバルに大差をつけるほどではありません。
また、ライバルをどの車種に想定するかで評価は大きく変わってしまいますので、ここではトヨタと日産の主力コンパクトカーである「パッソ」と「マーチ」との比較をしています。
「スイフト」の属するクラスのコンパクトハッチは、全長3.6~3.8mというコンパクトカーとしても小振りなサイズですから、取り回しの良い反面、けっして室内が広い車種ではありません。
大人4人なら十分ですが、長距離となると大人2人と荷物という使い方に割り切る必要があります。
また、軽自動車も検討するユーザーも多いクラスのために、軽自動車に対して普通車ならではの差別化も必要になります。
車体(㎜) | 室内(㎜) | ホイールベース(㎜) | |
---|---|---|---|
スイフト |
3,840 1,695 1,500~1,525 |
1,910 1,425 1,225 |
2,450 |
パッソ |
3,650~3,660 1,665 1,525 |
1,975 1,420 1,270 |
2,490 |
マーチ |
3,825 1,665 1,515 |
1,905 1,370 1,270 |
2,450 |
新型スイフトの居住性
新型となった「スイフト」のボディサイズやホイールベースは前モデルとほぼ同じですが、新プラットフォームによって空間効率が向上し、室内スペースは拡大しています。
さらに容量が足りないという不満の声が高かった荷室はその容量が倍増しており使い勝手はかなり向上しています。
しかし、前モデルとの比較では向上しているものの、比較車種の中でももっとも短いホイールベースのために、室内長は物足りず後席の居住性は軽トールワゴンの方が良いくらいです。
ちなみに軽自動車の「アルト」のホイールベースは2,460mmで、2,450mmの「スイフト」より10㎜長いのです。
また、「シンプルで洗練された」とメーカーが標榜するシートを始めとするインテリアの質感は、主力となる欧州やインドでは良くても、目の肥えた日本のユーザーには安っぽさが目についてしまい、軽自動車の「ラパン」ほどのワクワク感も「ソリオ」のようなシートアレンジも望めません。
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パッソの居住性
1.0Lのみに絞った「パッソ」の室内空間は、2,490mmという「スイフト」を超えるロングホイールベースを採用したために「スイフト以上であり、四隅にタイヤを配しエンジンルールを極端に小さくまとめた結果、特に後席足元空間や頭上の余裕も十分にあります。
「スイフト」が軽自動車とは切り離したグローバルカーとしているのとは対照的に、ダイハツが軽自動車造りのノウハウを活かしたパッケージングは正に国内向け。
そのため荷室スペースは軽自動車並みでしかありません。
また、質感も軽自動車そのものですが、使い勝手の良いオシャレな内容であり、女性にターゲットを絞ったことで荷室容量の不足やシートのサイズ不足も感じさせない巧妙さもうかがえます。
マーチの居住性
「スイフト」と同じ1.2Lのハッチバック車ということで比較するには最適なのが日産の「マーチ」です。
ボディサイズも似かよっており、ホイールベースは同一寸法。
今回は取り上げていませんが、三菱の「ミラージュ」も含めてどうやらこのサイズが新興国を中心とするグローバルコンパクトの標準サイズのようです。
ボディ形状の影響もあり後席の居住性は「マーチ」の方が若干広めで、パッケージング自体は3気筒エンジンを搭載するおかげでエンジンルームも小さく、室内の広々感は「マーチ」の方が優れているようです。
しかし、そのインテリアの質感となると話しは変わってきます。
「スイフト」も機能性重視であり質感は物足りないのですが、「マーチ」の安っぽさは群を抜いています。
最近の軽自動車を見慣れた日本のユーザーには新興国製ということを別にしても納得がいかないでしょう。
30万円以上も高い「ボレロ」という上級装備車であればと思っても、シートの材質や色合いのみの変更にすぎず、質感という意味では代わり映えしません。
長距離ドライブにはシートのサイズや見た目も含めてつらいものがあります。
燃費を比較
新型の「スイフト」にマイルドハイブリッド車が設定されたことにより、燃費性能においてライバルに大きな差を付けることになりました。
「スイフト」クラスのコンパクトカーにとって車両価格と燃費性能は最優先課題です。
しかし、その燃費は一クラス上の「カクア」や「フィット」そして「ノート」などのハイブリッド勢に大きな差を付けられています。
170~200万円もする車両価格の差を考えればまだ「スイフト」などの1.2L車の方がお得であるのは間違いないのですが、リッター10㎞以上の差が付いてしまってはユ-ザーに支持されないのです。
そんな中で「スイフト」のマイルドハイブリッドは、価格の上昇を最小限に抑えるもっとも有効な手段かも知れません。
車両価格(円) | JC08モード燃費 | |
---|---|---|
スイフト | 1,343,520~ | 20.0~27.4 |
パッソ | 1,150,200~ | 24.4~28.0 |
フイット1.3 | 1,299,800~ | 20.8~26.0 |
ヴィッツ1.0 1.3 | 1,181,520~ | 18.0~25.0 |
ノート1.2 | 1,393,200~ | 18.2~23.4 |
新型スイフトの燃費
標準モデルに搭載される「デュアルジェットエンジン」も燃費性能には定評があり、840㎏という一部の軽自動車よりも軽量なボディによって24.0㎞/Lという低燃費性能を誇っています。
それでも「ヴィッツ」の25.0㎞/Lには届かず、「ノート」もほとんど変わらぬ燃費なのです。
そこで「スイフト」に導入されたのは「ソリオ」で採用されているマイルドハイブリッドです。
軽量でシンプルな構造の簡易型のハイブリッドシステムながらも、27.4㎞/Lというライバルを一歩リードする燃費性能を達成し、尚且つ「アクア」などのフルハイブリッド勢の装備を落としたエントリーグレードよりも14~15万円安い価格で十分な装備のグレードが手に入ります。
また、標準車同様に4WDが選べるのもメリットと言えるでしょう。
燃費だけ考えれば、「ソリオ」にはいわゆる「ストロングハイブリッド」の設定もありますが、価格の上昇分や「アクア」などとの直接対決を避ける意味でも「マイルドハイブリッド」の採用は正解だったのではないでしょうか。
しかし、「アクア」とは異なり直接的なライバルである「ヴィッツ」にハイブリッド車が設定されるとなると、「スイフト」にもストロングハイブリッド車が投入されるのも近いかも知れません。
パッソとヴィッツの燃費
1.0Lの「パッソ」はさすがni28.0㎞/Lと1.2Lの「スイフト」を上回りますが、「ヴィッツ」3気筒の1.0L車よりも、4気筒の1.3L車の方が燃費性能は良い「ねじれ現象」が起きています。
同じ1.0Lの「パッソ」より劣るのは、28.0㎞/Lの「パッソ」に対して大人一人分の重量増とアイドリングストップの差が4㎞/Lの差に表れたものです。
その「ヴィッツ」の1.3L車は、25.0㎞/Lで「スイフト」の1.2L標準車を上回ります。
今回「スイフト」にはマイルドハイブリッド車が加わりましたが、「ヴィッツ」にもすでにハイブリッド車の設定が予定されており、こちらは「アクア」にせまる37.0㎞/L前後の性能が予想されており、価格も「アクア」を下回るとされ、「スイフト」にとっては脅威となるでしょう。
パッソの評価と買取・値引き・燃費情報 | 車価格.net
ヴィッツの評価と買取・値引き・燃費情報 | 車価格.net
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マーチとノートの燃費
「マーチ」はライバルとさほど変わらぬ軽量ボディであるのにもかかわらず、23.0㎞/Lの燃費は実燃費には差がないとはいえ低燃費を売り物に出来ないのです。
特に4WD車のFF車に対しての燃費の差が大きく、18.4㎞/Lにとどまります。
日産のもう一つの1.2L車である「ノート」の通常エンジン車は、「マーチ」より100㎏ほど重いが23.4㎞/L、さらにスーパーチャージャーの「DIG-S」は26.4㎞/L、さらに「e-Pawer」になると37.2㎞/Lにもなりますが、比較すべきは一番低価格の通常エンジン車です。
「マーチ」よりは約20万円高いのですが、「スイフト」となら十分対抗できます。
走りを比較
「スイフト」は低燃費、低価格のコンパクトカーということだけではなく走行性能にも定評があります。
小排気量でありコストも最少減におさえなければならず、尚且つ低燃費が必須ですのでパワーも望めないという制約の中で走行性能に多くは期待しないユーザーも多いでしょう。
そこで、高速走行は苦手な非力なエンジンであっても、軽量な車体で軽快に走るというのが現在のコンパクトカーの解決策となります。
エンジン種類 |
最高出力 kw(ps)/rpm |
最大トルク N・m(kgf・m)/rpm |
|
---|---|---|---|
スイフトハイブリッド |
直列4気筒 1,242 +モーター |
67(91)/6,000 +2.3(3.1)/1,000 |
118(12.0)/4,400 +50(5.1)/100 |
スイフト1.2L |
直列4気筒 1,242 |
67(91)/6,000 | 118(12.0)/4,400 |
スイフトRSt |
直列3気筒 996直噴ターボ |
75(102)/5,500 | 150(15.3)/1,700~4,500 |
マーチNISMO |
直列3気筒 1,198 |
58(79)/6,000 | 106(10.8)/4,400 |
マーチNISMOS |
直列4気筒 1,498 |
85(116)/6,000 | 156(15.9)/3,600 |
ヴィッツ1.3 スポーティー パッケージ |
直列4気筒 1,329 |
73(99)/6,000 | 121(12.3)/4,400 |
新型スイフトの走り
新型「スイフト」は、前モデル比で最大120kgという 徹底した軽量化と、高剛性を両立した「ハーテクト」という新プラットフォームを採用し、大人二人分にもなる重量減により走行性能は向上前モデル以上に進化しています。
また「RS」「ハイブリッド RS」「RSt」は、欧州の道路環境を想定しており、「欧州チューニング ショックアブソーバー」「欧州チューニング タイヤ」「欧州チューニング 電動パワーステアリングコントローラー」のどにより、直進安定性を発揮するチューニングを施しています。
さらに新設定され、「RSt」に搭載される1.0L直噴ターボエンジンは、直列3気筒のダウンサイジングターボエンジンで、1.0Lながら1.5L自然吸気エンジン並みの高出力と高トルクを実現します。
このエンジンは「バレーノ」にも搭載されていますが、より軽量な「スイフト」に搭載されることで走行性能は格段に向上し、6ATが採用せることで他のモデルに設定されるCVTよりはリニアなフィーリングとなります。
他のコンパクトカーとは一味違う、「スイフト」ならではの持ち味は新型であっても損なわれないどころか、ますます磨きがかかったようです。
残念なのは「スイフトスポーツ」の発表がまだないことですが、東京オートサロンにおいて「スイフトレーサーRS」なるコンセプトカーが出品されていることから、今後の市販化計画が期待されます。
マーチの走り
「マーチ」標準車の走りということでは評価される点はないのですが、専用エアロパーツやサスペンションからタイヤ、ステアリング、ブレーキに至るまで専用チューニングされた「NISMO/NISMO S」がラインナップされています。
「NISMO」の1.2LエンジンとCVTは標準車と変わりませんが、「NISMO S」は専用チューニングされた1.5Lエンジンと5速マニュアルの組み合わせにより標準車とは異次元の走行性能を発揮します。
後で紹介する「ヴィッツRS」も同じように1.5Lエンジンを採用し、価格帯も似ているスポーツモデルですが、「NISMO/NISMO S」はより本格的な内容となります。
走りとは無縁の標準車と、まさにホットハッチの「NISMO」 をラインナップさせていることが「マーチ」の魅力かも知れません。
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ヴィッツの走り
「ヴィッツ」には「RS」というグレードがあり唯一1.5Lエンジンを搭載していましたが、1月12日にマイナーチェンジを行った際に廃止されています。
スポーツタイプとしては「スポーティーパッケージ」がありますが、内容としてはエアロパーツと大径アルミホイールなどの装備アップに留まり、「マーチNISMO/NISMO S」のような本格的なスポーツモデルとは異なりますが、同じボディの1.0L、と比較すると大きな差が実感できます。
動力性能にはあまり見るべきものがないように見える「ヴィッツ」ですが、欧州仕様の「ヤリス」はWRC参戦車両のベースにもなっており、その基本性能は折り紙付きです。
しかし、「ヴィッツ」で走りを楽しむなら新設定された「ヴィッツハイブリッド」を選ぶべきでしょう。
実は「1.3Uスポーティーパッケージ」より安いのです。
安全装備を比較
コンパクトカーとはいえ安全装備は必須条件となっています。
すでに軽自動車であっても自動ブレーキはあたりまえである現在、コンパクトカークラスではさらに進んだ「先進運転者支援システム」という装備が必要となってきます。
これらの装備は日進月歩の開発により、最新機種であるほど有利になってきています。
フルモデルチェンジされた「スイフト」は当然であり、トヨタは発売年度の古い車種にも順次装着を進めていますが、日産については遅れているようです。
どんな装備や性能よりもまず、「先進運転者支援システム」の有無で車選びに差が出るほどユーザーの注目度も高いために各車のもっともチェックすべきポイントといえるでしょう。
新型スイフトの安全装備
「スイフト」に設定される「デュアルセンサーブレーキサポート システム」は、フロントガラスに設置した中・長距離に強く歩行者も認識する単眼カメラと、近距離や夜間の検知に優れたレーザーレーダーという2種類のセンサーを組み合わせたシステムを採用、「前方衝突被害軽減ブレーキアシスト機能」、「自動ブレーキ機能」そして「線逸脱警報機能」、「ハイビームアシスト機能」などを搭載します。
残念ながら全車標準装備とはなりませんが、「セーフティパッケージ」はフロントシートSRSサイドエアバッグもセットで、グレードにより91,800円から96,120円という価格設定のメーカーオプションになり「XG」グレードには設定されていません。
マーチの安全装備
「マーチ」にはフロントシートSRSサイドエアバッグがメーカーオプションで設定される程度で、 先進運転者支援システムどころか軽自動車にも標準装備されはじめている自動ブレーキすら設定がありません。
日産のこの分野への対応の遅れは大きく、新型車や高級車以外の車種が取り残されているのが現状です。
ヴィッツの安全装備
“Toyota Safety Sense C”も「スイフトと同じくレーザーレーダーと単眼カメラを併用した検知センサーにより、事故の回避や衝突被害の軽減を支援します。
メーカーオプション価格は54,000円で、SRSサイドエアバッグ(運転席・助手席)&SRSカーテンシールドエアバッグ(前後席)は43,200円なので、合計すると「す日宇と」の「セーフティパッケージ」とほぼ同額になります。
総括
スズキは「ソリオ」に簡易型のマイルドハイブリッド車に加えてストロングハイブリッドとも呼ばれる本格的ハイブリッドシステムを採用した「ソリオハイブリッド」を導入しましたが、コンパクトカーの枠を超える広い室内スペースという付加価値を持つ「ソリオ」に対して、より低価格であることを優先するハッチバックタイプの「スイフト」には燃費と価格のバランスの取れたマイルドハイブリッドの方が適切な選択であったことは評価されます。
競合車種の多いコンパクトカークラスでの「スイフト」の販売は楽観を許しません。
しかし、スズキらしい真面目な車造りの「スイフト」は、買い替え時期に候補の一台に加えるに相応しい車種です。
注:記事中のスイフトの画像は許諾を得て掲載しております