トヨタのコンパクトカーを徹底比較(新型ラクティス・ヴィッツ・アクア・ポルテ)
内外装の意匠変更と燃費を向上させた改良であるが、同時期にトヨタのコンパクトカーが相次いでマイナーチェンジされている。
そこせ、トヨタの車種同士ではあるが、何が変わったのかを比較し、この中でベストなコンパクトカーはどれかを探ってみた。
室内スペースや使い勝手などの比較
「アクア」「ポルテ/スペイド」と同じ全長ながら、室内長は一番短く、全長の10センチ短い「ヴィッツ」のほうが長いくらいだ。
インテリアの造形による影響もあり、室内寸法は実際の広さとは異なることも多いが、最大19センチの差は少なくなく、後席の足元スペースの差や自由度に現れている。
車幅は全て同じ寸法で、全高は「ポルテ/スペイド」の方が高いのにかかわらず、「ラクティス」のほうが室内高が高い。
ラゲッジの開口部地上高が一番低いのが「ラクティス」。
デッキアンダートレイとアジャスタブルデッキボードも装備し、荷室高の高さを最大1,200ミリ確保できる。
「ポルテ/スペイド」はリクライニング、クッションチップアップ機構付分割可倒式リアシートやシートスライドを利用して、限られた空間を有効利用したシートアレンジを活用する。
もちろん大開口の助手席スライドドアは唯一。
しかし、運転席側後席にもヒンジドアを装備したが、助手席側にはない。
「アクア」はバッテリーを後席下に収納することで、室内と荷室の床下を確保したが、シートアレンジに制限が残った。
「ヴィッツ」はそのコンパクトな外観から想像出来ないほどの室内スペースを確保しているが、荷室寸法には限界がある。
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元ディーラーマンが解説
広い室内と十分な容量のラゲッジスペース、それでいてコンパクトで取り回しの良いサイズが求められるコンパクトカー。
全てが100%という結果に出来ないなら、何かを犠牲にすることで、何かを得るしかない。
もしくは全て80点でいくか。
コンパクトに徹した「ヴィッツ」、燃費のためにシート下を犠牲にした「アクア」、助手席側の使い勝手に特化した「ポルテ/スペイド」となる。
他銘柄で見ると、大人気の「ノート」が「ラクティス」に近いパッケージを持ち、「フィット」は「ヴィッツ」と同等。
しかし、他銘柄2車はプラスアルファの魅力を兼ね備え、販売では「ラクティス」に差を付けている。
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デザインや個性など主なターゲットの比較
「個性」という点では「ポルテ/スペイド」がダントツだろう。
大開口のスライドドアが小さなお子さんを持つ主婦層をターゲットにした結果だ。
高齢者を同乗させる機会のある方にも好評だ。
「ラクティス」が今までライバルに差を付けられていたのは、ターゲットを絞り込めないことにもある。
燃費も個性だということなら「アクア」は、あらゆることに目をつぶってでも燃費に特化させたことで、ターゲットを燃費至上主義者に絞っている。
そして大成功したと言える。
「ヴィッツ」は燃費に加わえて、低価格でターゲットを購入金額を抑えたい層を取り込んでいる。
しかし、軽自動車に近くなり、しかもより効果的だ。
元ディーラーマンが解説
主婦層をターゲットにした経済車に絞り込んだクルマ造りで成功しているのは、言うまでもなく軽トールワゴン。
登録車は軽自動車にない付加価値を持たなければならない。
規格に縛られないより広い室内がそうだろう。
そうでなければターゲットを変えるか、ターゲットのクルマに対する意識を変えて、虜にさせるような魅力を持たせるかだが、今回取り上げた4車にそれがあるだろうか。
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燃費性能など技術的な比較
NAの3車は、「ヴィッツ」の1.0Lを除けば全て同じエンジン。
揃ってマイナーチェンジを機にアイドリングストップを設定し燃費を向上させた。
わずかな差は車両重量の影響だ。
車両価格も似通っていて、販売チャネルによる振り分けで、基本的には同じ機構を持ったクルマである。
「アクア」は燃費№1を掲げるトヨタ製ハイブリッドだけあって37.0㎞/Lの低燃費はNA勢を寄せ付けない。
元ディーラーマンが解説
結果として「アクア」は販売絶好調だが、反面トヨタ内のNAコンパクトカーの足を引っ張ることになった。
これを解決するにはひとつ上のクラスの「プリウス」がそうであるように、次々にハイブリッド化せざるをえないが、価格などの問題が横たわる。
しかしトヨタ製コンパクトカーを比較すると差はほとんどない。
ハイブリッドがリチウムイオン電池などの採用でスペース効率を上げると、もはや欠点すらなくなる。
全ての店舗内で購入出来るだけに、NA車の立場は厳しい。
総評
ユーザーの求めるコンパクトカーとしての最大公約数をそろえているのが「ラクティス」。
室内の広さ、使いやすさ、装備、燃費、走行性能、ルックス、全てが満足するレベルで、購入した人の満足度は高いものがあるだろう。
トヨタとしては完璧なクルマ造りとなっているが、なぜか販売成績が付いてこない。
コンパクトカーを求めるユーザーは、限られた予算内で、全てを求めるのは不可能と知っている。
しかし、何かひとつでも抜きん出たものを求める。
それは燃費か低価格か、そのためには他を犠牲にしてもいい。
その要望を見誤ると、軽自動車に流れる。
トヨタにそれが理解出来ているかというと、わからないからこそ多彩なコンパクトカーのバリエーションを持つことになる。
スペック比較表
スマホの方は画面を横にしてご覧下さい。
メーカー・車名 | ラクティス | アクア | ポルテ/スペイド | ヴィッツ |
---|---|---|---|---|
車両価格(円) | 1,615,091~2,041,000 | 1,748,572~2,005,714 | 1,491,428~1,964,572 | 1,155,600~1,994,073 |
車両寸法(㎜)全長×全幅×全高 | 3995×1695×(1585~1605) | 3,995×1,695×1,445 | 3,995×1,695×1,690 | 3,885×1,695×1,500 |
室内寸法(㎜)長×幅×高 | 1875×1420×1310 | 2,015×1,395×1,175 | 2,065×1,390×1,255 | 1,920×1,390×1,250 |
ホイルベース(㎜) | 2,550 | 2,550 | 2,600 | 2,510 |
乗車定員(名) | 5 | 5 | 5 | 5 |
エンジン型式・排気量(cc) |
1NZ-FE 直列4気筒 1.496 1NR-FKE 直列4気筒 1.329 |
1NZ-FXE 直列4気筒 1.496 + 1LM |
1NZ-FE 直列4気筒 1.496 1NR-FKE 直列4気筒 1.329 |
1NR-FKE 直列4気筒 1,329 1NR-FE 直列4気筒 1,329 1KR-FE 直列3気筒 966 1NZ-FE 直列4気筒 1,496 |
最高出力 kw(ps)/rpm |
1NZ-FE 80(109)/6,000 4WD 76(103)/6,000 1NR-FKE70(95)/6,000 |
54(74)/4,800 + 45(61) |
1NZ-FE 80(109)/6,000 4WD 76(103)/6,000 1NR-FKE70(95)/6,000 |
1NR-FKE 73(99)/6,000 4WD 70(95)/6,000 1KR-FKE 51(69)/6,000 1NZ-FE 80(109)/6,000 |
JC08モード燃費(㎞/L) |
1.3L 20.0~21.8 1.5L 19.0~20.6 4WD 16.6 |
37.0 |
1.3L 18.4~19.6 1.5L 19.0~20.6 4WD 16.0 |
1.3L 21.6~25.0 1.5L 17.2~21.2 4WD 18.0 1.0L 21.6~24.0 |
駆動方式 | FF 4WD | FF | FF 4WD | FF 4WD |
ミッション | Super CVT-i | 電気式無断変速 | Super CVT-i | Super CVT-i |
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