軽ハイトワゴン徹底比較(N-WGN・ムーヴ・ワゴンR・デイズ)
ホンダ「N」シリーズの本命となるハイトワゴンの「N-WGN」がデビューした。つい最近までは「ワゴンR」と「ムーブ」の2強と、そのOEM車のみの戦いであったこのクラスであったが、おりからの軽自動車ブームにより、維持費の安さと低価格、低燃費と取り回しの良さ、そして広い室内空間を兼ね備えた理想のパッケージとして、ハイブリッド車をも凌ぐ大人気クラスに成長した。
写真はN-WGNカスタム
2013年に入ってからは日産/三菱連合軍の「デイズ/ekワゴン」が参入、そして「N-WGN」の登場で一気に国内最大の市場規模と熾烈な販売競争の場となった。あらためて各車と新顔「N-WGN」を比較してみる。
ホンダ N-WGN
ホンダの新世代軽自動車ラインアップ「Nシリーズ」の第4弾。パワートレーンは他のNシリーズ同様だが、内部を全面的に改良し、数多くの技術を投入している。その結果、クラストップのパワーを誇りながらも29.2㎞/Lという「N-ONE」を上まわるJC08モード燃費を達成させた。
ホンダ独自のセンタータンクレイアウトによって、独特のパッケージを展開する室内は、居住性を優先する傾向があるこのクラスであっても、広いラゲッジ容量が必要になるシーンも出てくるために、リアシートは前後に200mmスライドする方式を採用。リアシートを後端まで下げると、前後席の距離がハイトワゴンでトップクラスの1110mmとなり、リアシート下のスペースは、「リアシートアンダートレイ」、ラゲッジ側は2段フロア式の収納スペースとしている。
評価
とんがったコンセプトがエクステリアにも出がちなホンダだが、今回は最量販クラスへの導入のため、「普通のハイトワゴン」を目指した。よって、「N ONE」のように、特に目立つデザインではない。唯一、パワートレインにはこだわりを持ち、クラストップのパワーを誇るのはホンダらしさ。不毛な燃費競争には参加しないと言いつつも、このクラスにおいてはトップクラスの数値を確保。しっかり参加してみせた。
ダイハツ ムーブ
サーモマネジメント技術を追求したイーステクノロジーで29.0㎞/Lの低燃費。それ以外でもスマートアシストなど安全装備の採用も主婦層を中心に支持を集める要因となっている。このクラスでは珍しい、横開きのバックゲートを発売当初より採用する。
評価
2012年12月のビッグマイナーチェンジで魅力を復活。フルモデルチェンンジした「ワゴンR」の出鼻をくじくことに成功、その後もライバルとそん色ない販売を記録しており、2014年末とされる新型登場まで戦力を更新し続ける。
フルモデルチェンジしても、新規機種が登場しても、大して変わり映えしない外観なら、新開発のパワーユニットなどを投入していれば、ユーザーも納得する。事実最新機種の「N-WGN」と性能、装備に大きな差はなく、互角の商品力だ。
スズキ ワゴンR
5代目となる軽ハイトワゴンの先駆車。室内空間の拡大とともに低燃費技術は進化を遂げ、エネチャージ、新アイドリングストップシステム、エコクールなどの技術や最大で70㎏に及ぶ軽量化技術を盛り込んでおり、発売当時のクラストップの28.8㎞/Lの低燃費は、現在30.0㎞/Lというハイブリッド並みの数値まで進化し、もちろんトップの座を死守する。
また、ロングホイールベースの新プラットフォームを採用し、室内長、前後乗員間距離を拡大して広々とした室内空間を実現し、 簡単で多彩なシートアレンジを継承。収納スペースは収納力と使いやすさを追求している。そして、全車にフルオートエアコンや、エコ運転を支援する「エコドライブアシスト照明」、「エコスコア」を標準装備した。
評価
2012年のフルモデルチェンジで燃費も向上したが、よもやの大苦戦。マイナーチェンジした「ムーブ」に大差をつけられた。2013年に入りようやくエンジンがかかり、3月にはトップの座に。ダイハツとの燃費競争により燃費は細かく上昇を続け、現在は800m差で「N-WGN」「デイズ」を抑え、クラストップを死守している。
日産デイズ/三菱ekワゴン
つい最近までは、上記2車が席巻していた軽ハイトワゴンクラス。そこに2013年6月発売された。日産と三菱との合弁会社「NMKU」が企画、日産が企画から関った初の軽自動車で、新開発の3気筒エンジンと副変速機付CVT、軽量ボディによって「Nワゴン」と同じ低燃費29.2km/L(JC08モード)を実現している。三菱の「ekワゴン/カスタム」が姉妹車として同時発売された。パッケージングやパワートレインに独自のものはないが、普通車作りのノウハウを注入して主にインテリアで上級感を与えている
評価
三菱側の案が採用されたというエクステリアは、先行するライバルに酷似しており、オリジナリティは感じられない。このあたりは「N-WGN」に軍配を上げたいが、「普通」の軽ハイトワゴン」を求めるユーザーには問題にならず、むしろ安心感さえある。
燃費も後発である優位性でトップを獲得したが、数百メートル単位でクラストップの座を取り合う、軽自動車の燃費競争の烈しさの洗礼を受けた形だ。
総評
最近は日本独自の軽自動車規格が、TPPなどの座で貿易障害のやり玉に上げられたりする影響か、軽自動車税の増税にまで言及されている。それもこのハイトワゴンクラスの好調な販売が原因だろう。海外メーカーも可能なら同じ土俵で参戦してくれたら楽しいのだが、規制された歴史の中で作り上げたこのクラスは海外の名だたるメーカーも、参入不可能なほど進歩している。
とはいえ、そろそろ限界が近いのもたしかだ。ホンダ、日産が新たに参入して盛り上がりを見せるものの、どれも似通った内容である。別表を作成していても、全てコピーして済みそうなくらい同じ数値が並ぶ。デザインにしても、オーナーでなければ(であっても)他車との区別が困難なほど。唯一、インテリアの意匠や、空間アレンジに特徴が見いだせる程度だ。
「N-WGN」「デイズ/ekワゴン」は後発のメリットで優位な状況だが、それを維持し続けるほどの差はなく、話題を集めた「デイズ/ekワゴン」もライバルに埋もれている。「N-WGN」がどこまで突き抜けられるか、見ものである。
スペック比較表
スマホの方は画面を横にしてご覧下さい。
メーカー・車種名 | ホンダ N-WGN ”カスタム”を含む | ダイハツ ムーブ ”カスタム”を含む | スズキ ワゴンR ”スティングレーを含む” |
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価格 | 1,131,000~1,630,000 | 1,070,000~1,601.000 | 1,099,350~1,613,850 |
車体寸法(㎜) | 3,395×1,475×(1,655~1,675) | 3,395×1,475×1,620 | 3,395×1,475×(1,640~1,660) |
室内寸法(㎜) | 2,055×1,355×1,300 | 2,130×1,350×1,280 | 2,165×1,295×1,265 |
ホイルーベース(㎜) | 2,520 | 2,455 | 2,425 |
車両重量(㎏) | 820~920 | 820~870 | 750~870 |
最小回転半径(m) | 4.5~4.7 | 4.4~4.7 | 4.4~4.6 |
トランスミッション | CVT | CVT | CVT |
エンジン型式・排気量(cc) | S07A DOHC直列3気筒 658 | KF 直列3気筒DOHC 658 | R06A 直列3気筒DOHC 658 |
エンシ゛ン出力(kw/ps) |
43(58)/7,300 47(64)/6,000 ターボ |
38(52)/6,800 47(64)/6,400 ターボ |
38(52)/6,000 47(64)/6,000 ターボ |
JC08モート゛燃費(㎞/L) | 23.0~29.2 | 23.4~29.0 | 24.2~30.0 |
燃料タンク容量(L) | 30 | 30 34(4WD) | 27 |
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